State of the Marketer: Creating Compelling Customer Experiences in Challenging Times
Customer Experience

人工知能(AI)の普及に向けた取り組み

March 7, 2024 1 分で読めます
マーケティング担当者は好んで AI を使っていますが、消費者の中には AI を敬遠する人もいるのが現実。どのように消費者を安心させ、AI への不信感を解消できるかをご紹介します。

デジタルマーケティングにおいて、差別化とイノベーションの推進はますます強まっています。競争の激化と消費者の好みの進化により、企業は常に差別化を図り、革新的で効果的なサービスを提供し続けなければならない環境にあります。これは、オーストラリア、英国、米国のマーケターと消費者を対象に実施した最新のカスタマー・エクスペリエンス(CX)トレンド・レポートから得られた知見のひとつです。

多くのマーケターは、差別化を図るためにコンテンツ戦略を見直す必要に迫られていると感じていますが、往々にして追加予算を得られないでいることが明らかになっています。この傾向は、特にコンテンツ制作における人工知能(AI)への依存の高まりとともに生じており、約半数のマーケターが CX を強化する極めて重要なテクノロジーとして生成 AI を挙げています。

一方、消費者はそれほど納得しておらず、人口統計学的要因や地理的要因が AI に対する態度に影響を及ぼしています。マーケターの熱意と消費者の不安というこの対比は、AI をマーケティング戦略に組み込む際、透明性が高く、人間性を重視したバランスの取れたアプローチを取る必要性を強調しているのではないでしょうか。

AI に対するマーケターの意識

圧倒的多数のマーケター(83%)は、競合他社よりも優位に立ち、見込み客や顧客に対して際立った存在となるために、従来とは異なるコンテンツを提供しなければならないというプレッシャーにさらされていると回答。また、ほぼ全員が目標達成のためにデジタル CX 戦略を最近変更したと回答しています。

また、マーケターはコンテンツ作成に人工知能を活用していることも示しており、ほぼ半数(45%)が生成 AI が CX にポジティブな影響を与えるトップテクノロジーの1つであると回答。

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Responses to CX Survey about what martech solution has biggest impact

AI の投資対効果に対する期待

AI がデジタル体験の創出にどのような変化をもたらすか(すでに変化は起きているかもしれませんが)、多くのマーケターが期待を寄せているのではないでしょうか。とりわけマーケターは、AI を活用した顧客データプラットフォーム(CDP)が体験を効果的にパーソナライズすることを可能にするなど、他の分野で AI の恩恵に慣れ親しみ、その効果を実感しているのです。

当社の調査によると、ほぼすべてのマーケター(96%)が、AI から得られる ROI は高いと回答しており、同じ割合で AI が効率化に役立つと前向きな回答をしています。また、同様の97%が、AI によってクリエイティブ性が向上し、より迅速な顧客対応が可能になると確信していると回答しています。

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CX Survey responses about how marketers feel about AI

AI 活用とセキュリティへの懸念

しかし、熱意が最高潮に達している一方で、AI について学ばなければならないことがまだたくさんあることをマーケターは認識しています。3分の1以上が「AI の使い方を理解すること」を最大のマーテック課題として挙げています。そして、90%近くが、プライバシーやセキュリティの観点から AI をマーケティングに活用することに懸念を抱いていることを認めています。

AI に対する消費者の反応は鈍い

マーケターは AI に傾倒しているように見えますが、多くの消費者はあまり積極的とはいえません。チャットボットのような AI テクノロジーに接したとき、ポジティブな感情を抱くと回答したのは少数派(40%)。ブランドのチャットボットを使って自分の質問に答えてもらうのが好きだと答えたのは半数以下(48%)でした。

AI チャットボットに対する消費者の感じ方は、消費者の年齢が影響すると考えられており、消費者が若ければ若いほど AI に対してオープンな傾向が見られます。当社の調査によると、Z 世代の回答者の62%がチャットボットの利用を好んでおり、ミレニアル世代の回答者では57%に減少。X 世代と団塊世代では AI チャットボットへの関心がさらに低く、それぞれわずか42%と29%が「利用したい」と回答しています。このことから、マーケターは AI 主導の機能を展開する際、それぞれの顧客層を意識し、自分たちの熱意が顧客に浸透していると思い込まないようにする必要があるでしょう。

アメリカでは、他の地域の消費者よりも AI に対してオープンな傾向があるようです。半数近く(47%)のアメリカの消費者が AI チャットボットに肯定的な反応を示しているのに対し、オーストラリアの消費者は39%、イギリスの消費者は35%にとどまっています。さらに、男性は女性よりも AI に肯定的な反応を示す傾向が高く、男性の49%に対して女性はわずか33%でした。

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CX Survey responses about consumer sentiment toward AI

なぜ一部の消費者は AI に消極的なのか?

消費者が AI に対して抱く感情の理由を理解しようとするのは今回の調査の範囲外ではありましたが、The Verge と Vox Media Insights and Research による2023年の「Hope, Fear, and AI(希望、恐怖、AI)」レポートでは、共通するいくつかの戸惑いに光を当てています。

AI に対する消費者の態度は複雑であり、ニュアンスが異なっています。Vox/Verge の調査によると、多くのアメリカ人が AI ツールを活用しており、特に若い世代の間では AI に関する議論が一般的であることが明らかになりました。しかし、回答者の78%がデジタルコンテンツにおける AI の使用について開示されることを望んでおり、透明性に対する明確な要求が見られます。

また、AI が雇用を奪うことへの懸念も広がっており、AI の進歩に社会が適応する必要性への認識も高まっています。これは、消費者の間に AI に対する熱意と警戒心が混在していることを示しているもので、その潜在的な利点と課題を映し出しているといえるでしょう。

しかし、消費者側の懸念の多くは、単に未知なるものへの恐れかもしれません。2023年のイプソスの世論調査によると、テキストまたはビジュアル生成 AI システムを使用していると回答したアメリカ人はごく一部(16%)にとどまっています。そしてその16%のうち、AI の最も一般的な用途は、アート、写真、画像の作成(41%)であり、次いで仕事のためのテキスト作成(21%)、学業(11%)でした。

消費者が AI と触れ合い活用することで、そのメリットを体感し、AI をより身近に感じるようになるかもしれません。しかし、これは一夜にして実現するものではないでしょう。その時までマーケターは、顧客や見込み客が AI に対する好意的な気持ちを持たない可能性があることを認識し、AI に対する感情が世代や地域によって大きく異なることを理解しなければなりません。また、AI が作成するコンテンツや体験が、慎重に計画されたユーザー体験に沿い、ブランドの本質を支えるものでなければならないということも覚えておく必要があります。

AI に不安を抱く消費者をマーケターが安心させるには?

全体として AI はマーケターにとって大きな機会をもたらす一方で、消費者の懸念に対処しながらその利点を十分に活用するためには、慎重で配慮の行き届いた顧客中心のアプローチも必要となります。顧客や見込み客に効果的にサービスを提供し、彼らの懸念を和らげるような方法で AI を活用するために、マーケターができることをいくつか紹介しましょう。

  • 教育と透明性の提供: 多くの消費者が AI、特にプライバシーやセキュリティといった分野に警戒心を抱いていることを踏まえ、AI の利用方法について透明性を確保することに注力する必要があります。これには、どのようなデータが収集され、それがどのように使用され、消費者のプライバシーを保護するために企業がどのような対策を講じているかを伝えることが含まれます。消費者にAIの利点と保護措置について教育することは、信頼構築に役立つでしょう。
  • パーソナライズ機能の強化は慎重に: AI は高度にパーソナライズされたマーケティングを可能にしますが、消費者のプライバシー尊重とのバランスを取る必要があります。パーソナライゼーション戦略によって消費者が監視されていると感じたり、不快に感じたり、ビジネスが境界線を越えていると感じたりすることがないようにしましょう。
  • 人間中心のアプローチを重視する: AI は多くの効率化と進歩をもたらす一方、消費者は人間との対話を明らかに好み、顧客体験の一部に「人間味」を求めています。AI をブランドとのインタラクションにおける人間的な要素と置き換えるのではなく、強化するために活用しましょう。
  • 規制遵守の準備: 消費者の懸念が規制措置につながることが多いため、AI 利用をめぐる潜在的な規制を予測し、それに備える必要があります。これには、既存のデータ保護法を遵守し、AI に特化した新たな法規制の最新情報を入手することが含まれます。
  • ブランドの信頼を築く: AI に対するネガティブなイメージを打ち消すために、信頼を築き、維持することを優先すべきでしょう。つまり、責任を持って AI を活用し、ブランドの約束や価値を一貫して実現しなければならないということです。
     

AI のような新しいテクノロジーが、顧客体験の未来をどのように形成していくのかについて詳しく知りたい方は、「マーケターの現状:試練の時代における魅力的な顧客体験の創造(CX トレンドレポート)」(英語)をダウンロードしてください。

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