Mauticが独立したオープンソースプロジェクトへ
2019年、アクイアはMauticを買収しました。Mauticは、同名のオープンソースのマーケティングオートメーションプロジェクトを運営する会社です。
あまり知られていないことですが、アクイアがMauticを買収する前、Mauticはアクイアのオフィスでインキュベートしていました。私はMauticのエンジェル投資家であり、Mauticの創業チームであるDB HurleyとMatt Johnstonのアドバイザーを務めていました。Mautic、そのインキュベーション、成長、そして未来に個人的なつながりがあるといっても過言ではありません。
アクイアがMauticを買収した後、私たちはRuth CheeselyをMauticのプロジェクトリードに任命し、Mauticのリリースモデルを合理化して明確なガバナンスモデルを確立しました。これらの変更とRuthのリーダーシップのおかげで、3年前と比較して、Mauticのコントリビューターが10倍に増えるなどMauticは大きく成長しました。
Mauticの成長を支援:Mautic独立の決断
しかし、2022年に近づくにつれ、Mauticが次のレベルに到達するためには、成長のためのリソースがもっと必要だと思うようになりました。「今後5年後で、Mauticの貢献度を10倍にするにはどうすれば良いか?」私は自分に問いかけをしました。
2023年に向けての計画やリソース配分が完了するにつれ、アクイアはMauticが成長し続ける中で十分なサポートを提供することができないと認識することが多々ありました。そこで、アクイア管轄からMauticを切り離すことが有益であると考えるようになりました。
数ヶ月前、私はRuthとDrupal Associationに対して、オープンソースのデジタル体験プラットフォーム(オープンソースDXP)を作るという共通の目標をもった様々なオープンソースプロジェクトの総括組織として、Drupal Associationを設立するというアイディアを持ちかけました。
具体的には、MauticをDrupalと並ぶ2番目のプロジェクトとして参加させ、Drupal AssociationがMauticに対してイベント開催やインフラ管理など、資金面や後方支援をしていこうというものでした。
Drupal Associationを複数のオープンソースDXPプロジェクトの統括組織とする可能性も検討しましたが、Mauticは最終的に独立したプロジェクトとなることを希望しました。
Mauticに多大な貢献をする人の中には、DrupalとDrupal Associationから独立することが、Mauticの長期的な利益につながると考える人もいました。Mauticコミュニティの主要なステークホルダーは、Mauticが独立したプロジェクトになるための財政的なサポートを増やしてくれました。彼らの熱意と財政的な支援によって、独立したプロジェクトは実行可能な選択肢となりました。
今回伝えたいのは、アクイアがその方向性を支持するということです。アクイアはMauticをスピンアウトさせて独立したオープンソースプロジェクトにすることに同意しました。
Drupalで経験した、見慣れたシナリオ
Mauticをスピンアウトさせるという決断は、オープンソースに詳しくない人には直感に反する用に見えるかもしれませんが、私にとっては自然なことだと感じています。私は、オープンソースプロジェクトは独立したコミュニティ主導のものであるべきだと強く信じています。
過去、Drupalの拡大が勢いを増した時、私はその成長をサポートする必要性を認識し、Drupalの発展に貢献する独立した非営利団体であるDrupal Associationの設立を支援しました。Drupal Associationを設立する際、Drupalが独立性を保ち、コミュニティ内の全ての人にとって公平を保つことを維持するために、私は多大な努力を払いました。これはDrupal Associationの設立時だけではなく、のちにアクイアを立ち上げる際にも重要なことでした。
Mauticは、私がDrupal Associationを共同設立した時と同じような立場にあり、コミュニティからの熱意と献身が同程度にあるのです。そして、私がDrupalの中で公平を保つことに努めたように、アクイアからMauticをスピンアウトさせることは、Mauticコミュニティの全ての人にとって公平を保つことにつながるでしょう。
Drupalのあゆみを振り返ると、Drupal Associationとアクイアの両方がDrupalの成功に重要な役割を果たし、現在もそうであることは明白です。しかし、Drupalプロジェクトの独立性と公平性が、何万人もの個人と組織の貢献者を惹きつけてきたのです。Drupalの公平な環境が大きなコミュニティを生み出し、最終的にはDrupalコミュニティがDrupalの成功の真の理由なのです。
そのため、RuthとMauticコミュニティが次のステップに進むことに、私はワクワクしています。10年後、大きなコミュニティに支えられ独立したMauticの価値を認識し、評価することになると確信しています。
Mauticが独立したオープンソースプロジェクトになるための次のステップ
次のステップとして、アクイアはスタンドアロンのMauticプロジェクトに代わって、Mauticの商標、ドメイン名、完全なガバナンスを、スタンドアロンのMauticプロジェクトに代わってOpen Source Collectiveに移管する予定です。Mauticは、プロジェクトリーダーの任命、商標やドメイン名の保持など、独自の利点を持つアクイアから移行するために、ガバナンス構造を更新する予定です。
この移行を促進するために、現在のMauticプロジェクトリーダーであるRuth Cheesleyは、アクイアの社員から、Open Source Collectiveの雇用機関を通じて、Mauticプロジェクトに直接雇用されることになりました。さらに、アクイアはこの移行を財政的に支援するため、80,000米ドルの寄付を行う予定です。
Mauticの成功に依存するアクイアは、Mauticに引き続きコミットする
Mauticプラットフォーム上に構築されたマーケティングオートメーション製品であるAcquia Campaign Studioは、市販されているMauticソリューションとしては最大規模であり、アクイアの製品の中でも急速に成長している製品の一つです。今後もアクイアの製品ポートフォリオの重要な一部であり続けるでしょう。
オープンソースに深く根ざした企業として、私たちの長期的な成功はMauticプロジェクトの成功に直接結びついていることを理解しています。Mauticをスピンアウトした後も、アクイアはMauticの成功にしっかりとコミットし続けます。私たちはMauticに貢献し続ける予定であり、Campaign Studioが成長し続けるにつれて、貢献度を高めていく計画です。
また、今年末から来年初めにかけて、商業用Mauticをさらに強化し、更なる成長を促すエキサイティングな製品の発表を控えています。こちらについては後日、ブログで紹介するので続報をお待ちください!
最後に
私は、アクイアがMauticに多くの貢献を行なっていることを誇りに思っています。また、アクイアがMauticを独立して運営することを認知したことも誇りに思います。全てのオープンソースコミュニティには、独自の成長物語と持続可能性への道のりがあります。
Mauticのスピンアウトの決断は、全くリスクが無いとは言えませんが、潜在的な利点はリスクを上回ると強く信じています。アクイアは、Mauticに多額の投資をしている企業として、Mauticの成功に尽力し、今後も支援を続けていきます。
若鳥が成熟して巣立つことと同じように、プロジェクトやコミュニティも進化し、その起源を超えて成長する可能性があります。Mauticに初期から関わり、その歩みを支えてきたものとして、Mauticの次の展開に期待しています。