ユーザー数の増加率
ページビューの増加率
平均ページ滞在時間の増加率
クライアント
AdaptNSWは、ニューサウスウェールズ財務省エネルギー・気候変動局(OECC)が制作するウェブサイトです。その目的は、「コミュニティ、企業、家庭、政府が気候変動に適応するための情報を提供し、力を与えること」です。
背景
2014年に公開された旧バージョンのサイトは、気候変動の予測やデータを、主に理系の専門家といった狭い範囲の人たちに届けることを目的としていました。しかし、OECCがサイトの利用データを長期的に見直したところ、多くの訪問者はより基本的な情報を求めており、サイトの既存の構造とコンテンツは彼らのニーズを満たしていないと判断しました。
OECCは、ウェブサイトの再開発にあたり、次のことを目指しました。
- 820万人の住民のうち、より幅広い層にタイムリーで適切なコンテンツを提供し、より明確なナビゲーションによるアクセスのしやすさを実現する
- OECCが「先延ばし屋」、「狩猟採集民」、「問題解決者」、「先導者」と分類したカテゴリーグループを含む、どの段階の人々にも、気候変動情報への関心を具体的な行動に移すよう動機付ける
- 気候変動が州内の健康、ビジネス、レジャーに及ぼす幅広い影響と関連付けるコンテンツを用いて、人々が持つ多様な価値観に語りかける
- 他の政府機関が今後のワークショップやカンファレンスを知らせることができるような、新しいコミュニケーションチャネルを追加する
- 住民個人、グループ、企業、その他の組織による気候変動対策の具体的な事例を共有し、読者の行動を喚起する
課題
AdaptNSWのサイトリニューアルの包括的な目標は、ターゲットとなるステークホルダーの行動変容を促すことでしたが、ユーザビリティとアクセシビリティも解決すべき課題として位置づけられました。
特に、クリエイター向けコンテンツの構築を効率化するためのパターンやコンポーネントのツールキット「NSW政府デジタルデザインシステム(DDS)」に、OECCのウェブサイトを適合させる必要がありました。また、NSW政府はOECCにWCAG 2.1 AA(ウェブコンテンツをよりアクセシブルにするための推奨事項)への準拠を義務付けています。以前のウェブサイトはこのアクセシビリティ基準に達していなかったため、アクセス数が減少し、コンプライアンス上の不利益を被る可能性がありました。
OECCの内部では、新しいウェブサイトを導入することで、面倒なコンテンツ制作のワークフローを解決し、既存のサイトコンテンツに見られる「壁のようなテキストの数」を減らすために、デザインの自由度を高めることが期待されていました。
ソリューション
OECCは、デザイン・開発会社であるSitback Solutionsにこのプロジェクトを依頼。Sitbackが参加したときはすでに、ユーザーリサーチ、ジャーニーマッピング、ペルソナ作成が行われ、OECCはさまざまなグループのニーズについて理解を深めていました。また、OECCはDeloitte Digitalと協力して初期のUXデザインを作成し、SitbackのチームはそれをNSW DDSの標準に合わせるように調整するという作業が行われました。
情報アクセシビリティを向上させるため、SitbackはAdaptNSWのコンテンツデザインと出版ワークフローを簡略化すべく、サイトの最適化を行いました。具体的には、パラグラフモジュールを拡張し、ダイナミックテンプレートを使って構造化されたコンテンツブロックを作成できるようにしました。これにより、ヒーローコンポーネントを簡単にページに追加したり、カルーセルやアコーディオンなどの要素の作成が可能になり、見た目にも魅力的なコンテンツをスピーディに公開できるようになりました。
また、複数のデータセットを利用し、ニューサウスウェールズ州内のさまざまな地域の気候予測を表示するカスタム気候予測マップを構築しました。このマップでは、地域別、今後の時期別の気候データを簡単に読み解くことができます。このマップを使えば、ユーザーはシンプルで魅力的な方法で必要なデータにアクセスできるのです。ユーザーはページを閉じたり更新したりすることなく、データセット間をシームレスに切り替えることができ、OECCは将来のデータセットに合わせてツールを簡単に更新できる仕組みを保持しています。さらに、マップには設定を保存する機能があり、ユーザーはコミュニケーションや論文の中でマップの特定のバージョンを共有することができます。コミュニティ、学術、研究の現場では、AdaptNSWのビジターがあらかじめ定められたマップを使用し、全員が同じ認識を持つことができるようにします。
最後に、SitbackはAdaptNSWの訪問者にポジティブな体験を提供するために、以下のようなベストプラクティスを実現しました。
- 全体的なスピードとパフォーマンスを向上させるために、連結、簡略化、キャッシュを実装する
- すべてのコードが効率的でダイナミックな形で書かれていることを確認し、ハードコードされた値なしに再利用できるようにする
- Drupalから余分なHTML出力を削除し、DDSに従ってコードが適切に表示されるようにWebhookやCSSを記述する
- 時間短縮、コスト削減、開発コミュニティからのサポートを可能にするため、利用可能な場合は提供されたモジュールを取り入れる
アクイアのデプロイの容易さは、Sitbackの効率とAdaptNSWサイト開発プロセスの全体的な成果において極めて重要でした。Pipelineスクリプトを利用することで、サイトのBitbucketコードリポジトリと実際のアクイア環境へのデプロイを自動化することが出来ました。その結果、これまで15~45分と複数のステップを必要としていたテストとデプロイのプロセスが、シンプルなコードプッシュで完了できるようになり、今後SitbackがAdaptNSWのウェブサイトを改善し続けていく上で特に価値のあるものになりました。
アクイアのインフラによって、Drupal CMSに組み込まれたネイティブな機能とともに、OECCのサイトパフォーマンスとサイトセキュリティが強化されました。このプロジェクトで特に有益だったのは、データやファイルをオーストラリア国内でホスティングするという政府の要件をサポートできる点です。AdaptNSWサイトのインフラがすべてオーストラリア国内に保存されていることを保証するというアクイアのサポート体制により、プロジェクトの稼動に遅れが生じることはありませんでした。
結果
ブランドという観点から見ると、他の政府のウェブサイトと比べて、新しいAdaptNSWのウェブサイトはより一貫性のある体験を生み出しています。この新しいサイトを立ち上げてから5ヶ月の間に、以下のような成果が得られました。
- ユーザー数51%増加
- ページビューが21%増加
- 平均ページ滞在時間が22%増加
また、「気候リスク対応ガイド」や関連ツールのダウンロード数、ページ間の相対的なエンゲージメントも記録しています。例えば、新しいウェブサイトが開設される前は、「気候変動の原因」のページがサイト閲覧数の約13%を占めていました。現在ではこのページの閲覧数は約8%となっており、サイト内の気候変動に関するリソースがより多く利用され、全体的なエンゲージメントが高まっていることがうかがえます。
また、サイトライブラリの導入により、ユーザーの好みをより深く理解することができるようになりました。ニュースレターとウェブサイトのリソースを統合できるようになったことで、OECCはクリックトラッキングを利用して、どの記事が読者にとって特に興味深いかを測定することができるようにもなりました。こうしたインサイトを活用して、よりターゲットを絞ったコンテンツを作成できるようになったことで、OECCのブランドイメージや訪問者の体験はさらに向上していくことでしょう。