ADA とは何か、ウェブサイトとの関係は?
障がいを持つアメリカ人法(ADA)は1990年7月26日に成立し、障がい者の平等で公平な扱いを定めています。この法律は、雇用、州および地方政府、公共施設、電気通信、その他の5つの分野において障がい者の平等な権利を保障しています。これらは通常、ADA のタイトル I、II、III、IV、V と呼ばれています。
ウェブアクセシビリティは、ADA のタイトルIIIに該当します。タイトル III は、公共の宿泊施設(ホテル、学校、レストラン、スポーツジム、小売店、図書館、医師など)のすべてのエリアが、すべての利用者のために情報やサービスへの平等なアクセスを確保しなければならないと定めています。もともとは物理的なアクセス障壁を対象とするものでしたが、同法に基づく新たな訴訟により、司法省(DOJ)は公共の宿泊施設の定義を拡大し、ウェブサイトやオンラインアプリケーションも含めるようになりました。つまり、ウェブサイトは公共の場とみなされ、ウェブサイト上のアクセス障壁はこの法律に違反することになるのです。
しかしながら、ADA においてウェブアクセシビリティは必ずしも新しいものではありません。州および地方自治体のウェブサイトは、これまで ADA のタイトル II に基づいてウェブアクセシビリティの対象となってきました。公共団体のウェブサイトのためのコンプライアンスツールキットは、ADA のウェブサイトに掲載されています。
ADA を遵守しなければならないのは誰か?
ウェブサイトを運営するすべての人が対象となります。公共の場、つまり一般の人々に開放されているビジネスに該当するすべてのウェブサイトは、ADA のタイトル III に準拠する必要があるのです。
しかし、連邦政府のウェブサイトに関しては、1973年リハビリテーション法第508条の対象となります。
ADA のタイトル III が採用しているウェブアクセシビリティ基準とは?
ADA にはウェブアクセシビリティへの準拠を定義する独自の技術基準はありませんが、司法省は世界標準の WCAG 2.0レベル AA を参考にしています。ADA のタイトル III に基づいて起こされた多くの裁判では、準拠している基準のベンチマークとして WCAG 2.0、そしてその後の WCAG 2.1が支持されています。
WCAG と ADA
WCAG は、ウェブサイトのアクセシビリティに関する世界的な基準とされており、国際的なさまざまな法律の基準として使用されることが多くあります。WCAG には、A、AA、AAA という3つの準拠レベルがあり、A は基本的かつ緊急な機能性の問題に対処する最も簡単なレベルであり、AAA は技術的な微調整が多く含まれる最も難しいレベルとなります。前述の通り、司法省は訴訟において WCAG 2.1 AA 要件を参照していますが、WCAG 2.1が認知されているとはいえ、まだ ADA の厳格な基準として設定されているわけではありません。ADA が WCAG 2.1を採用するか、独自の基準を策定するまで、督促状や訴訟、司法省は WCAG 2.1を参照し続けることになると予想されます。
ADA への対応について
WCAG 2.1は下位互換性があるため、WCAG 2.1に準拠することは、旧バージョンにも準拠することを意味します。WCAG レベル AAA はほぼ実現が難しいことから、多くの企業や組織にとってはレベル AA への準拠を目指すことが最良の選択肢であると考えられています。
何よりも先に行うべき最初のステップは、サイトの現在のアクセシビリティレベルを監査し、現状を確認することでしょう。そこから、ウェブアクセシビリティの実装、維持のための持続可能な戦略を策定することができます。
ADA のタイトル III を遵守しないとどうなるのか?
ADA のタイトル III を遵守しなかった場合、初回の違反で最高75,000ドル、2回目以降の違反で最高150,000ドルの民事罰が科される可能性があります。さらに、裁判費用、弁護士費用、ウェブサイトのアクセシビリティを改善するための費用が発生する可能性があります。
ADA ウェブサイト準拠の原則
ADA に準拠するために、ウェブサイトでカバーすべき WCAG の基本原則がいくつかあります。これらの原則は、認知可能(Perceivable)、操作可能(Operable)、理解可能(Understandable)、堅牢(Robust)の頭文字をとって POUR と呼ばれています。
認知可能(Perceivable)
情報を伝える要素やウェブサイトのUIを構成する要素は、ユーザーがそれを見つけ、処理し、理解できるように表示されなければならない
操作可能(Operable)
ウェブサイトのすべての機能とナビゲーションは使いやすいものでなければならない
理解可能(Understandable)
情報および UI 操作は、あらゆる能力を持つユーザーにとって明確に理解できるものでなければならない
堅牢(Robust)
ウェブサイトは、多様な最新かつ潜在的なユーザーエージェント(支援技術を含む)をサポート出来るよう、対応可能でなければならない
POUR の原則に従った ADA 適合チェックリスト:
- 画像、ビデオ、スライド、ポッドキャストなど、テキスト以外のコンテンツに代替テキストを提供し、スクリーンリーダーなどの支援技術を用いて他のアクセシブルなフォーマットに変換できるようにする
- 時間ベースのメディアに代わるものを提供する
- 作成されたコンテンツは、文脈や情報を失うことなく、拡大表示や別のモバイルデバイスでの表示など、さまざまな方法で表示できるようにする
- 背景に対する画像やテキストの色のコントラストをつける
- 一時停止や音量調整など、オーディオコントロールのオプションを提供する
- ウェブコンテンツのすべての機能にキーボードだけでアクセスできるようにする
- 一定時間後にコンテンツが変更される場合は、ユーザーがコンテンツを読むのに十分な時間を確保するか、コンテンツの変更をコントロールするオプション(自動カルーセルの一時停止ボタンなど)を提供する
- 人によっては発作を誘発する可能性があるため、1秒間に3回以上点滅する画像、アニメーション、動画を含むコンテンツは避ける
- 見出し、テキストセクション、リンクなどが明確に定義された、直感的なナビゲーションとページ構造にする
- テキストは、ターゲットユーザーと彼らが使用する可能性のある支援技術の両方が読みやすく、理解しやすいものにする
- メニューバーや色などの要素がすべてのページで一貫しているなど、ウェブページが予測可能な方法で表示され、操作されるようにする
- 明確な指示またはラベル、間違いを修正する方法の提案、通知、役立つ情報へのアクセス、および問い合わせフォームを提供し、サイト上で障がい者が混乱しないようにする
- 支援技術やツールなど、現行のユーザーエージェントとの互換性を確保し、今後の拡張性も確保する
ADA 準拠のために Acquia Optimize ができること
Acquia Optimize のウェブアクセシビリティモジュールは、WCAG 2.1(およびその後のガイドラインの更新)に照らしてサイト全体のアクセシビリティを監査し、ウェブサイトをよりアクセシブルにするお手伝いをします。
毎回機械によるテストが可能な問題をスキャンし、発生した可能性のあるエラーを確認できる詳細なレポートを提供します。また、ガイドラインに基づいてこれらのエラーに対処する方法について的確なアドバイスを提供し、WCAG 2.1のレベル A、AA、AAA に基づいて準拠状況を表示。履歴センターのレポートでアクセシビリティ遵守の進捗状況を追跡し、証明することができます。また、自動と手動の両方の改善方法を習得し、ウェブサイトのアクセシビリティを効率的かつ一貫して改善できるよう、お客様向けのアクセシビリティトレーニングとサポートを一括で提供しています。
Acquia Optimize はまた、ウェブアクセシビリティへの取り組みを補完するための無料ツールも提供しています。たとえば、ウェブデザインに準拠した色の組み合わせをテストするためのカラーコントラストチェッカーや、透明性のあるウェブサイト方針を示し、ウェブアクセシビリティへの公開ステートメント作成を支援するツールなどもご用意しています。
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