欧州アクセシビリティ法(EAA)とは?
よりアクセシブルな製品やサービスを市場に導入し、そのようなサービスの価格を下げ、アクセシビリティに関連した雇用を増やすことを目的とした欧州アクセシビリティ法(EAA)は、EU 加盟国にさまざまなアクセシビリティ要件の制定を法的に義務付ける EU の指令です。
EU 内で活動するオンライン組織にとって、この法律は重要かつ広範囲な影響を与えることになるでしょう。何よりも重要なのは、EU 加盟国が従うべき一連の共通アクセシビリティルールを提供する点であり、これは理論上、地域全体により大きな結束力と一貫性をもたらすことになると言えます。
EAA に準拠すべきなのは誰か?
重要なのは、この新法が以前の EU 法(EU ウェブアクセシビリティ指令)のように公的機関だけでなく、特定の民間組織にも適用されることです。
欧州アクセシビリティ法は、以下の製品とサービスを対象としています。
- コンピューターやオペレーティングシステム
- ATM、チケット発券機、チェックイン機
- 電話やスマートフォン
- 地上デジタル放送関連 TV 機器
- 電話サービスおよび関連機器
- 視聴覚メディアサービス
- 航空、バス、鉄道、水上旅客輸送に関するサービス
- 銀行サービス
- E ブック
- E コマース
EAA は、EU 域内で販売または使用される製品およびサービスに適用され、当該製品およびサービスを提供する企業の所在地に関係なく適用されることに留意することが重要です。
EAA が使用しているウェブアクセシビリティ基準は?
欧州アクセシビリティ法は、ヨーロッパ規格 EN 301 549を使用しています。この EN 301 549は、ウェブコンテンツ、電子文書、ネイティブモバイルアプリなどの非ウェブソフトウェアのアクセシビリティをカバーするウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン(WCAG)2.1を採用しています。
WCAG と EAA
EN 301 549 は、WCAG 2.1 のレベル A と AA の両方への適合をカバーしていますが、レベル AAA はカバーしていません。しかし適用可能で関連性がある場合、ウェブ制作者とアクセシビリティ専門家には、概説された基準を超えてウェブサイトとアプリのアクセシビリティを改善・拡張することが奨励されることに留意する必要があります。
WCAG 2.1のアクセシビリティの4原則である「知覚可能」「操作可能」「理解可能」「堅牢」は、EN 301 549でカバーされています。
知覚可能(Perceivable)
情報を伝える要素、つまりウェブサイトの UI コンポーネントは、ユーザーが見つけ、処理し、理解できるように表示されなければならない。
操作可能(Operable)
ウェブサイトのすべての機能とナビゲーションは使いやすいものでなければならない。
理解可能(Understandable)
情報や UI の操作は、あらゆる能力を持つユーザーにとって明確で理解しやすいものでなければならない。
堅牢(Robust)
支援技術を含む、既存および将来的ニーズの見込まれる多様なユーザーエージェントをサポートできるよう、適応および発展が可能なウェブサイトでなければならない。
EN 301 549は、ICT 製品およびサービス(ウェブコンテンツを含む)の機能的アクセシビリティ要件も規定しており、公共調達やその他の政策・法規制の支援に利用することができます。
欧州アクセシビリティ法に準拠するには
EAA を遵守するためには、WCAG の原則である「知覚可能(perceivable)」、「操作可能(operable)」、「理解可能(understandable)」、「堅牢(robust)」に従い、ウェブサイトやモバイルアプリケーションをアクセシブルにするために必要な対策を講じていることを確認しなければなりません。遵守期限は2025年6月28日となる見込みです。
コンプライアンスを遵守するために、オーバーレイは適切か?
欧州委員会は、アクセシビリティ・オーバーレイに関する声明を発表し、この種のアクセシビリティ・ソリューションを使用する際の課題について述べています。
「手作業による介入なしにサイトを完全に準拠させることができるという主張は、現実的ではありません。自動化されたツールでは、WCAG 2.1のレベル A と AA の基準をすべてカバーすることはできないからです。言い換えれば、オーバーレイツールは一部のユーザーにとってウェブサイトをアクセシブルでなくする可能性があります。」と記載されています。
つまり、オーバーレイやウィジェットは、WCAG 2.1 AA を参照する EN 301 549に完全に準拠するために必要な手作業の代わりにはならないということなのです。
EU に拠点を置いていない場合は?
注意しなければならないのは、たとえ EU に拠点を置いていない組織であっても、EU 加盟国内で活動する場合は、EAA の要求事項に従うことが求められるということです。
企業と消費者のメリット
EAA は企業にとって、よりアクセシブルな製品やサービスを生み出すインセンティブとなるでしょう。EAA の要件は、すでに独自のアクセシビリティ規制を設けている国だけでなく、すべての EU 加盟国に適用されるため、アクセシブルな製品の市場は大きく拡大すると予想されます。
その結果、消費者にも恩恵がもたらされ、より利用しやすい商品やサービスが提供されることになるでしょう。
EAA の要求事項が免除される組織は?
「小規模企業」と呼ばれる組織の中には、この法律の要件が 「過度の負担 」をもたらすという理由から、この法律の適用を免除される場合があります。
小規模企業とは従業員数10人未満、年間売上高200万ユーロ未満の企業を指し、このような組織は EAA の要求事項から除外されています。彼らが EAA に対応するためには、提供する商品やサービスの中核となる性質を変えるか、財務的に過大な負担を強いられることになるためです。
また、この指令は、以下の種類のウェブサイトやアプリのコンテンツには適用されません。
- 2025年6月以前に発行された時間ベースの録画済みメディア
- 2025年6月以前に発行された Office ファイル形式の文書
- オンラインマップ(ただしナビゲーションの目的で使用する場合は、必要な情報をアクセシブルな形式で提供しなければならない)
- ウェブサイトやアプリの所有者が完全に管理できない第三者のコンテンツ
- デジタル化するには壊れやすかったり、高価だったりする収蔵品の複製
- アーカイブとみなされるウェブサイトやアプリのコンテンツ(アクティブな管理目的には必要なく、もはや更新も編集もされていないもの)
- 学校、幼稚園、保育園のウェブサイト(管理機能に関わるコンテンツを除く)
EAA を遵守しないとどうなるのか?
EAA に対する違反は各国の法律に従って処罰されることになりますが、専門家の意見によれば、加盟国は指令の規制を遵守しない加盟国に対して罰金を課すことを選択する可能性が高いとのことです。
EAA 準拠のために Acquia Optimize ができること
Acquia Optimize のウェブアクセシビリティ・モジュールは、WCAG 2.1の適合基準(およびその後のガイドラインの更新)に照らして、サイト全体のデジタルアクセシビリティを監査します。
毎回、機械によるテストが可能な問題についてサイトをスキャンし、発生した可能性のあるエラーを確認できるように詳細なレポートを提供。また、ガイドラインに基づいてこれらのエラーに対処する方法について的確なアドバイスを行い、WCAG 2.1のレベル A、AA、AAA に基づいて準拠状況を表示します。履歴センターのレポートを通じ、アクセシビリティ・コンプライアンスの進捗状況を追跡し、証明することも可能。また、お客様にはアクセシビリティに関するトレーニングを提供し、自動と手動の両方の改善方法に精通し、ウェブサイトのアクセシビリティを効率的かつ一貫して改善できるよう、包括的なサポートを行います。
Acquia Optimize はまた、ウェブアクセシビリティへの取り組みを補完するための無料ツールも提供しています。たとえば、ウェブデザインに準拠した色の組み合わせをテストするためのカラーコントラストチェッカーや、透明性のあるウェブサイト方針を示し、ウェブアクセシビリティへの公開ステートメント作成を支援するツールなどもご用意しています。
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