第508条とは何か、ウェブサイトとどのような関係があるのか
1973年リハビリテーション法第508条(29 U.S.C. § 794 d)は連邦法であり、連邦政府機関に対し、開発、調達、維持、使用する電子・情報通信技術が障がい者にとってアクセシブルなものであること、また、職員か一般市民か、障がいがあるか無いかに関わらず同等に使用できるものであることを保証するよう義務づけています。第508条の対象となる電子情報通信技術には、ウェブサイト、ウェブアプリケーション、ソフトウェア、デジタル文書などが含まれます。
2018年、第508条はコンプライアンスをより容易にするために刷新。この改訂により、アクセシビリティ基準の国際的なアクセシビリティ基準との調和、ウェブサイトへのウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン(WCAG)の適用、すべての公共向け業務コンテンツ、および依然として公的機関の業務下にある特定のカテゴリの非公共向けコンテンツがアクセシブルであることの要件、電子文書、ソフトウェアが導入されたほか、支援技術と連携するツールや技術の必要性も明確化されました。
第508条を遵守する義務があるのは誰か?
第508条は米国の連邦政府機関にのみ適用されるため、民間組織や他国には影響しません。しかし、アメリカ政府は巨大なを購買力を持っているため、世界中の多くの企業や組織が第508条準拠を目指しています。
第508条が適用されない場合でも、米国のウェブサイトは ADA のような他の規制の対象となる場合があります。
第508条と ADA 準拠の違い
第508条と障がいを持つアメリカ人法(ADA)の両方は、障がい者のためのウェブサイトのアクセシビリティを強制する米国の法律です。しかしながら、この2つの法律が適用される社会的な領域は異なります。ADA は、公共の場などさまざまな分野での障がい者差別を禁止する市民権法であり、その範囲はウェブサイトにも及びます。しかし第508条は、IT 技術の使用と維持を規定する連邦法です。また、ADA は地方自治体、州政府、非営利団体、企業に適用されるのに対し、第508条は連邦政府機関にのみ適用されます。
第508条準拠と第504条準拠の違い
1973年リハビリテーション法には、障がい者のアクセシビリティについて言及している別の項目(第504条)が設けられています。第504条は、障がい者がプログラムに参加したり、サービスを利用したりするための平等なアクセスを提供することを機関に義務付けています。この法律は、高等教育機関、非営利団体、学校、病院、精神保健センターなど、連邦政府から資金援助を受けている組織に適用されます。第504条は、ウェブアクセシビリティには明確に言及していないものの、障がい者が情報を利用できるようにするために、点字、拡大印刷されたコンテンツ、ビデオキャプションなどの補助手段を提供しなければならないと定めています。しかしながら、Section508.gov のブログでは、ウェブサイトのような施設やコミュニケーションのアクセシビリティは、確かに第504条の要件に該当することが明らかにされています。
第508条が採用しているウェブアクセシビリティ基準とは?
2018年に更新された第508条項により、ウェブコンテンツ、ソフトウェアなどのすべての電子コンテンツは、WCAG 2.0レベル A および AA に適合しなければならないとされました。
第508条に準拠するには?
第508条は WCAG 2.0を踏襲していますが、準拠へのプロセスはより細かくなっているため、WCAG 2.0の指針に従ってサイトを監査し、改善を検討することが必要になります。技術的な全面的なレビューを行う前に、以下のチェックリストでサイトの表面的な監査を行ってみてください。ここに挙げている項目は、アクセシブルなサイトの基本を網羅しており、これらの要素が一つでも欠けていると、アクセシビリティが低下している可能性があります。
- オーディオコンテンツや動画コンテンツのような時間ベースのメディアの代替手段を提供する
音声や動画などのフォーマットでコンテンツを提供する場合は、キャプション、字幕、手話、トランスクリプトなどの代替メディアをユーザーに提供するようにしましょう。 - 支援技術をサポートするウェブサイトの構築
視覚障がい者が、テキストや画像を合成音声に変換するために使用するスクリーンリーダーのような支援技術に対応できるウェブサイトを構築しましょう。 - キーボードナビゲーション
キーボードだけでウェブサイトの操作をできるようにすることで、マウスを使うことができない運動障がいを持つ人にも操作可能になります。 - ナビゲーションリンクのスキップ
キーボードを使ってサイト内を移動する人のために、「ナビゲーションのスキップ」機能を有効にしましょう。これにより、ナビゲーションメニューのような繰り返しの多い要素をスキップして、ページのコンテンツに直接たどり着くことができます。 - 画像に代替テキストを含める
サイト上の画像はスクリーンリーダーにも読み取られるため、代替テキスト(alt テキスト)を画像に含めるようにしてください。代替テキストは、具体的でわかりやすいものでなければなりません。コンテンツに付加価値を与えないデザイン要素や、純粋に美的な目的のために存在するデザイン要素については、alt テキストに「null」を設定することで、装飾的なものとしてマークしましょう。 - 動画に代替テキストを含める
画像の alt テキストと同じように、埋め込み動画にも alt テキストを指定しましょう。 - わかりやすい色とコントラストを使う
色はウェブサイトデザインの重要な要素ですが、間違った色の組み合わせを使用すると、色のコントラストが悪くなり、色覚異常や弱視などの視覚障がいを持つ人がコンテンツを閲覧することが難しくなります。WCAG 2.0レベル AA では、通常のテキストでは少なくとも4.5:1、大きなテキストでは3:1のコントラスト比を要求しています。 - 画面のちらつきを防ぐ
1秒間に5~30回(ヘルツ)の頻度で点滅する画像、アニメーション、動画は、人によっては光過敏性てんかんを誘発する可能性がある場合があるので避けましょう。 - コンテンツに時間制限を設けない
コンテンツの表示時間を制限することは、第508条に準拠していません。特定の障がいを持つ人の中には、情報を読んだり、処理したり、オンラインでアクションを実行したりするのに、他の人よりも多くの時間を必要とする場合があります。
ウェブサイトやその他の ICT を監査するだけでなく、アクセシビリティの取り組みを推進・維持するために、各機関はアクセシビリティプログラムを構築することが推奨されています。各省庁はこのプログラムに基づいて、イニシアチブを主導するプログラムマネージャーの任命、アクセシビリティ方針の策定、ウェブサイトやその他の ICT を監査してアクセシビリティレベルを評価、チームへのトレーニング提供、アクセシビリティの継続的なテストと検証をすることが求められています。
第508条アクセシビリティプログラムの構築方法については、こちらをご覧ください。(英語)
第508条に準拠したウェブサイトのテスト方法
第508条準拠のために精査される必要のあるコンテンツは以下の通りです。
- ウェブサイトコンテンツ
- ソフトウェア
- ドキュメント
- プレゼンテーション資料
- スプレッドシート
- 動画・オーディオコンテンツ
第508条の基準に照らし合わせてウェブサイトのテストを行うには、下記のような方法があります。
自動テスト:Acquia Optimize のような、WCAG 要件に対するウェブサイトの検証を行う自動テストツールを使用する方法です。これは、第508条準拠にアプローチする最も効率的な方法ですが、これらの自動テストツールには限界があることもまた事実です。人間の主観を考慮しないため、サイトのテスト時に偽陽性が発生する可能性があるのです。必ず、実際に障がいを持つユーザーに対して、ウェブサイトのアクセシビリティを検証する必要があります。
手動テスト: section508.gov に概説されているテスト方法に基づき、記録され、一貫性があり、反復可能なプロセスを使用しましょう。
ハイブリッドテスト: 自動テストと手動テストの両方を組み合わせたもので、コンテンツの多い大規模サイトに効率的かつスケーラブルにアプローチする方法です。自動テストはサイト上のエラーを発見するために使用し、手動テストは新しいコンテンツや優先順位の高いコンテンツに対して実施します。
第508条を遵守しないとどうなるのか?
第508条を遵守しない場合、政府機関に対する訴訟、技術投資の遅滞、ブランドやイメージの毀損につながる可能性があります。
第508条準拠のために Acquia Optimize ができること
Acquia Optimize のウェブアクセシビリティモジュールは、WCAG 2.0、2.1、2.2(およびその後のガイドラインの更新)に照らして、サイト全体のアクセシビリティを監査します。
毎回、機械によるテストが可能なものについてサイトをスキャンし、エラーが発生した場合に確認できるように詳細なレポートを提供します。また、ガイドラインに基づき、これらのエラーに対処する方法について的確なアドバイスを提供し、レベル A、AA、AAA に基づくコンプライアンスを表示します。アクセシビリティコンプライアンスの進捗状況は、履歴センターのレポートで追跡・証明することができます。また、自動と手動の両方の改善方法を熟知し、ウェブサイトのアクセシビリティを効率的かつ一貫して改善できるよう、アクセシビリティトレーニングとサポートを一括で提供しています。
Acquia Optimize はまた、ウェブアクセシビリティへの取り組みを補完するための無料ツールも提供しています。たとえば、ウェブデザインに準拠した色の組み合わせをテストするためのカラーコントラストチェッカーや、透明性のあるウェブサイト方針を示し、ウェブアクセシビリティへの公開ステートメント作成を支援するツールなどもご用意しています。
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