欧州アクセシビリティ法とは?
EU のウェブアクセシビリティ指令は、2018年9月に公共機関アクセシビリティ規則として英国で施行されました。
英国は EU の加盟国ではなくなりましたが、この法律は引き続き適用されます。2020年9月23日をもって、英国のすべての公的機関はウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン(WCAG)レベル AA を満たすことが求められます。
英国の民間企業のウェブサイトは、2010年に制定された「平等法(The Equality Act of 2010)」の対象となっており、サイト所有者は、障がい者がアクセスできるように「合理的な調整」を行うことが義務付けられています。
英国のアクセシビリティ法を遵守しなければならないのは誰か?
英国では、公的機関および民間企業の両方において、ウェブアクセシビリティは必須要件となっています。欧州で活動するすべての組織は、欧州アクセシビリティ法(EAA)の規制に準拠する必要があるため、英国企業はできるだけ早くアクセシビリティ要件に対応し、将来に備えることを強くお勧めします。
EAA には、その要件を満たすことが組織にとって「著しく大きな負担」をもたらす場合など、いくつかの適用除外が設けられています。しかし、このような場合は正式な評価を受けることが必要となります。
英国法および EU 法の概要
英国は EAA の制定に関与していたにもかかわらず、ブリグジット後、EAA を国内法に導入する計画は現在のところありません。ただし、英国を拠点とする組織が EU 加盟国内で活動する際には、依然として EAA の要件に準拠することが求められる点に留意する必要があります。
欧州アクセシビリティ法(EAA)は、よりアクセシブルな製品やサービスを市場に導入し、そうしたサービスの価格を引き下げ、アクセシビリティに関連した雇用を創出することを目的とした欧州連合(EU)の指令であり、EU 加盟国にさまざまなアクセシビリティ要件の制定を法的に義務付けています。
この法律は、EU 域内で活動するウェブサイトを運営する組織にとって、重要かつ広範囲な影響を及ぼすことになります。最も重要なことは、EU 加盟国に共通のアクセシビリティルールを提供することであり、これは理論上、この地域全体の結束と一貫性を高めることになると考えられます。
重要なのは、この法律は従来の EU 法である「EU ウェブアクセシビリティ指令」のように公共部門だけでなく、特定の民間組織にも適用されることです。
欧州アクセシビリティ法は、以下の製品とサービスを対象としています。
- コンピューターやオペレーティングシステム
- ATM、発券機、チェックイン機
- 電話やスマートフォン
- 地上デジタル放送関連 TV 機器
- 電話サービスおよび関連機器
- 視聴覚メディアサービス
- 航空、バス、鉄道、水上旅客輸送に関するサービス
- 銀行サービス
- E ブック
- E コマース
前述の通り、EAA は EU 域内で販売または使用される製品およびサービスに適用されるため、当該製品およびサービスを提供する事業者が英国を含むどこに所在しているかにかかわらず、EAA が適用されることに注意する必要があります。
英国が採用しているウェブアクセシビリティ基準は?
英国のアクセシビリティ法は、国際的なデジタルアクセシビリティ基準として広く認知されているウェブ・コンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン(WCAG)に基づいています。一般的に、レベル AA ガイドラインを満たすコンテンツは、大多数の障がい者にとって合理的にアクセス可能であると考えられています。
WCAG 2.1のアクセシビリティの4原則は、「知覚可能(perceivable)」、「操作可能(operable)」、「理解可能(understandable)」、「堅牢(robust)」です。
知覚可能(Perceivable)
情報を伝える要素、つまりウェブサイトの UI コンポーネントは、ユーザーが見つけ、処理し、理解できるように表示されなければならない。
操作可能(Operable)
ウェブサイトのすべての機能とナビゲーションは使いやすいものでなければならない。
理解可能(Understandable)
情報や UI の操作は、あらゆる能力を持つユーザーにとって明確で理解しやすいものでなければならない。
堅牢(Robust)
支援技術を含む、既存および将来的ニーズの見込まれる多様なユーザーエージェントをサポートできるよう、適応および発展が可能なウェブサイトでなければならない。
英国のアクセシビリティ法に準拠するには
英国のアクセシビリティ基準を遵守するためには、WCAG の原則である「知覚可能(perceivable)」、「操作可能(operable)」、「理解可能(understandable)」、「堅牢(robust)」に従い、ウェブサイトやモバイルアプリケーションをアクセシブルにするために必要な措置を講じていることが求められます。これに加えて、公共部門の組織にはアクセシビリティに関する声明を公表することが義務付けられており、これは民間部門のウェブサイトにとっても望ましいやり方です。
企業および消費者にとってのメリット
英国のアクセシビリティに関する法律は、企業がよりアクセシブルな製品やサービスを製造するためのインセンティブとなるものです。すでに独自のアクセシビリティ規制を設けている国だけでなく、EU 加盟国すべてに非常に類似した要件が適用されるため、欧州におけるアクセシブルな製品市場は大きく拡大することになるでしょう。
その結果、英国の消費者にも恩恵がもたらされ、より利用しやすい製品やサービスが提供されることになります。
英国のアクセシビリティ要件が免除される組織は?
英国のアクセシビリティ法には、その要件が 「過度の負担 」をもたらすという事実に基づいて、「小規模企業」と呼ばれるいくつかの組織が免除されています。
小規模企業とは、従業員10人未満、年間売上高200万ユーロ未満の企業を指します。こういった組織は、英国のアクセシビリティ要求事項から除外されます。彼らが準拠するためには、提供する製品やサービスの中核となる性質を変えるか、財政的に過大な負担を強いられるためです。
また、公的機関アクセシビリティ規制は、ウェブサイトやアプリの以下の種類のコンテンツには適用されません。
- 2025年6月以前に発行された時間ベースの録画済みメディア
- 2025年6月以前に発行された Office ファイル形式の文書
- オンラインマップ(ただし、地図をナビゲーションの目的で使用する場合は、必要な情報をアクセシブルな形式で提供しなければならない)
- ウェブサイトやアプリの所有者が完全に管理できない第三者のコンテンツ
- デジタル化するには壊れやすかったり、高価だったりする収蔵品の複製
- アーカイブとみなされるウェブサイトやアプリのコンテンツ(アクティブな管理目的には必要なく、もはや更新も編集もされていないもの)
- 学校、幼稚園、保育園のウェブサイト(管理機能に関わるコンテンツを除く)
英国のアクセシビリティ法を遵守しないとどうなるのか?
中央デジタル・データ局(CDDO)は、英国のすべての公共部門のウェブサイトがアクセシビリティ規則に完全に準拠していることを保証する責任を負っています。
もし何らかの疑いがある場合、おそらくは定期的な検査から生じたものであっても、CDDO は企業のウェブサイトやその他のパブリックドメインにあるコンテンツへのアクセスを要求する権利を有します。ウェブサイトにアクセシビリティに関する声明を掲載しない企業は、その後 CDDO リストに名前が掲載され、制裁を受ける可能性があります。
平等人権委員会は、法律のすべての要件を執行する責任があります。委員会は法律に違反した企業を調査する権限を持っているだけでなく、その企業を裁判に訴える権限も有しています。
英国のアクセシビリティ法準拠のために Acquia Optimize ができること
Acquia Optimize のウェブアクセシビリティ・モジュールは、WCAG 2.1の適合基準(およびその後のガイドラインの更新)に照らして、サイト全体のデジタルアクセシビリティを監査します。
毎回、機械によるテストが可能な問題についてサイトをスキャンし、発生した可能性のあるエラーを確認できるように詳細なレポートを提供。また、ガイドラインに基づいてこれらのエラーに対処する方法について的確なアドバイスを行い、WCAG 2.1のレベル A、AA、AAA に基づいて準拠状況を表示します。履歴センターのレポートを通じ、アクセシビリティ・コンプライアンスの進捗状況を追跡し、証明することも可能。また、お客様にはアクセシビリティに関するトレーニングを提供し、自動と手動の両方の改善方法に精通し、ウェブサイトのアクセシビリティを効率的かつ一貫して改善できるよう、包括的なサポートを行います。
Acquia Optimize はまた、ウェブアクセシビリティへの取り組みを補完するための無料ツールも提供しています。たとえば、ウェブデザインに準拠した色の組み合わせをテストするためのカラーコントラストチェッカーや、透明性のあるウェブサイト方針を示し、ウェブアクセシビリティへの公開ステートメント作成を支援するツールなどもご用意しています。
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