ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン(WCAG)
ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン(WCAG)は、ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)が制定した国際的なアクセシビリティ基準です。
ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン(WCAG)とは?
ウェブ・コンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン(WCAG)は、ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)の一部であるウェブ・アクセシビリティ・イニシアティブ(WAI)によって策定された国際規格であり、現在も策定が続けられています。WCAG は、障がい者にとってウェブがよりアクセスしやすい場所になることを意図して作成されました。
このガイドラインは、ウェブサイトのコンテンツをアクセシブルにする方法について、技術的な推奨事項を提示するものです。米国の障がい者法(ADA)や欧州のウェブアクセシビリティ指令など、ウェブサイトのアクセシビリティに関連する法律の標準的な参考資料でもあります。
WCAG には強制力はありませんが、このガイドラインは、世界中で義務付けられているアクセシビリティ規制の基盤となっています。例えば、セクション508、AODA、CVAA、およびオーストラリアの DDA は、WCAG 2.0のレベル A および AA の成功基準に基づいています。さらに、EU のウェブアクセシビリティ指令は、WCAG 2.1レベル A および AA への準拠を求めています。
WCAG バージョン2.0、2.1、2.2、3.0
WCAGは、1995年に1.0が発行されて以来、何度か更新を重ねてきました。WCAG 1.0はその後、WCAG 2.0とそれに続くバージョンに取って代わられています。
- WCAG 2.0 - 2008年12月11日発行
- WCAG 2.1 - 2018年6月5日に公開され、現在は W3C の推奨版
- WCAG 2.2 - 2023年10月5日発行
改良により、新たな要件が追加されています。
- WCAG 2.0には61の評価基準がある。
- WCAG 2.1では、モバイル・アクセシビリティ、弱視者、認知障がいや学習障がいに対応するため、さらに17の評価基準が導入された。
- WCAG 2.2は2.1を発展させ、9つの新しい評価基準に加え、さらに1つの評価基準を更新し、より幅広いユーザーがコンテンツにアクセスしやすくすることを目的としている。
WCAG 2の新しいバージョンは後方互換性があり、2.0のすべての要件が2.1と2.2に含まれています。つまり、最新バージョンのガイドラインに適合するコンテンツは、旧バージョンにも適合することになります。
現行の WCAG バージョン2.0と2.1は、知覚可能(perceivable)、操作可能(operable)、理解可能(understandable)、強固(robust)という4つの原則に従って分類されており、それぞれの頭文字で POUR と表現します。
知覚可能(Perceivable)
情報を伝える要素、つまりウェブサイトの UI コンポーネントは、ユーザーが見つけ、処理し、理解できるように表示されなければならない。
操作可能(Operable)
ウェブサイトのすべての機能とナビゲーションは使いやすいものでなければならない。
理解可能(Understandable)
情報や UI の操作は、あらゆる能力を持つユーザーにとって明確で理解しやすいものでなければならない。
強固(Robust)
支援技術を含む、既存および将来的ニーズの見込まれる多様なユーザーエージェントをサポートできるよう、適応および発展が可能なウェブサイトでなければならない。
各原則の下にはそれぞれ検証できる評価基準があり、デジタルコンテンツをよりアクセシブルにするための推奨事項を示しています。評価基準は A、AA、AAA という3つのレベルに分類されており、A は WCAG 準拠の最も基本的なレベル、AAA は最も厳しいレベルとなっています。
WCAG の要素や基準に準拠する方法について詳しくはこちらをご覧ください。
2021年1月21日、WAI は WCAG 3.0の最初のドラフトを発表。WCAG 3.0は WCAG 2よりもユーザーフレンドリーで、より多くのコンテンツ、アプリ、ツール、そして組織や障害をカバーする柔軟なガイドラインにすることを意図した大幅な改訂となる予定です。なお、WCAG 3.0は現在も検討中であり、今後数年間は最終化されない見込みとなっています。
WCAG A、WCAG AA、WCAG AAA 準拠レベルの違い
WCAG はその適合性を3つのレベルで分類しており、A、AA、AAA があります。WCAG に準拠するためには、これらのレベルのいずれかを完全に満たすことが必要条件となります。
最低限の WCAG 準拠(レベル A)
レベル A は、ウェブサイトのデザインや構造にあまり影響を与えない、基本的な要件を含む基準適合の最低限のレベルです。
レベル A の審査基準の例
- 音声や動画のようなテキスト以外のコンテンツには、alt テキストやキャプションのような、同等の目的を果たす代替テキストを用意
- キーボードだけで効率的にウェブサイトが操作可能
- ウェブサイト上で3秒以上自動再生される音声がある場合は、音量の調整、停止、一時停止の手段を必ず提供
- 時間ベースのメディアやビデオコンテンツに代替(オーディオトラックなど)を提供
適切とされる WCAG 適合(レベル AA)
レベル AA は通常、WCAG を採用しているほとんどのアクセシビリティ法で言及されている準拠レベルです。レベル AA では、より多くのコミットメントと技術的な介入が必要ではありますが、十分に機能するアクセシブルなサイトが出来上がります。
レベル AA の審査基準の例:
- コンテンツに説明的な見出しやラベルを付ける
- メニューのようなサイト上のナビゲーション要素は、サイト全体で同じ位置に繰り返し配置
- フォームへの入力やボタンのクリックなど、サイト上でアクションを実行する際、ユーザー側でエラーが発生場合は、修正案を提示
最適な WCAG 準拠(レベル AAA)
レベル AAA は最適な適合性を示すレベルですが、より厳しく詳細な技術要件があるため、多くのサイトはこのレベルに達していません。
レベル AAA の審査基準の例:
- テキストの視覚的表現とテキストの画像は、少なくとも7:1のコントラスト比でなければならない
- 非インタラクティブな同期メディアやリアルタイムイベントは除く、すべてのコンテンツから時間制限を取り除く
- ユーザーがウェブページで情報を送信しなければならない場合、その送信を取り消すことができるようにし、入力エラーをチェックし(エラーが発生した場合は修正案を提示する)、必要に応じてユーザーが送信を確認し、編集できるような仕組みを設けなければならない
- 文字の画像は避けるか、装飾としてのみ使用する
WCAG 2.1 の評価基準
WCAG 2.1レベル A の評価基準
レベル A の評価基準の例
- 音声がテキストで代替され、そのようにラベル付けされている場合を除き、録音済みの音声コンテンツにはキャプションを提供しなければならない
- 内容の順序が重要な意味を持つ場合(ページ上の複数の列にまたがる内容など)、プログラムによって読み上げ順序を定義しなければならない
- 色が情報を伝えたり、行動を促したりする唯一の視覚的手段であってはならない(「はい」の回答として選択されるべきことを示すテキストがない緑色のボタンなど)
- キーボードのインターフェイスによってページの構成要素に移動できる場合、キーボードのインターフェイスだけを使ってその構成要素から離れることもできなければならない
WCAG 2.1レベル AA の評価基準
レベル AA の評価基準の例
- 特定の表示方向が必須でない限り、コンテンツの表示は縦または横方向に制限されない
- ウェブページ上のテキスト(キャプションやテキストの画像を除く)は、コンテンツや機能性を損なうことなく、支援技術を使わずに最大200%までサイズを変更することができる
- 見出しやラベルはトピックや目的を表す
- ウェブページの中で繰り返されるナビゲーション要素は、ユーザーが変更しない限り、同じ相対的な順序で表示される
WCAG 2.1レベル AAA の評価基準
レベル AAA の評価基準の例
- すべての録音済み音声コンテンツには手話通訳が付いている
- 緊急時の中断を除いて、ユーザーが中断を停止または延期することができる
- 略語の意味やその意味を示すためのメカニズムが用意されている
- 慣用句、専門用語、通常とは異なる使われ方をする単語やフレーズの意味を特定する仕組みが用意されている
WCAG に準拠するべきなのは?
WCAG は、以下のような対象者を想定してガイドラインを策定しています。
- ウェブコンテンツ開発者(ページ作成者、サイトデザイナーなど)
- ウェブ作成ツール開発者
- ウェブアクセシビリティ評価ツール開発者
ですが、ウェブサイトのアクセシビリティに対するニーズが高まるにつれ、オンライン上で活動するすべての人がウェブアクセシビリティの基準として利用すべきことは明らかでしょう。これには、政策立案者、マネージャー、研究者、教育者、マーケティング担当者、コミュニケーターが含まれます。また、ほとんどの国際的な法律は、最低限のウェブアクセシビリティ準拠として WCAG 2.0レベル AA を参照しているため、ウェブサイトの所有者であれば誰でもこのガイドラインに準拠することを要件としている国が世界中に多数あるのです。
WCAG ガイドラインに準拠するメリット
WCAG ガイドラインに準拠している企業は、障がいのあるユーザーだけでなく、すべてのウェブサイト訪問者にとってより良い体験を提供することになります。たとえば論理的なナビゲーションや、テキストと背景色の高いコントラストは、ウェブサイトとのより良いインタラクションをサポートします。
WCAG ガイドラインに準拠するその他の利点には、次のようなものがあります。
法的リスクの軽減 — WCAG ガイドラインは強制ではありませんが、強制力のある他の規制には影響を与えます。WCAG に準拠することで、企業はアクセシビリティ関連の規制に違反することを避けることができるはずです。
検索関連性の向上 — すべてのユーザーにとって真にアクセシブルなウェブサイトは、検索エンジンのボットにとっても十分にアクセシブルです。ボット(ウェブサイトをクロールするソフトウェアの一部)は、人間のようにすべてのコンテンツを見ているわけではないので、ボットがコンテンツの関連性を評価するのに役立つ追加的なコンテキストは、ウェブサイトの検索エンジンランキングを向上させるのに効果的です。
新たなオーディエンスへのアプローチ — 世界人口の約15%が何らかの障がいを抱えていると言われています。ウェブサイトをアクセシブルにすることで、無数の新しいユーザーを受け入れ、新たな収益源を開拓することができるでしょう。
ウェブサイトの WCAG 準拠レベルをチェックする方法
ウェブアクセシビリティはユーザー体験において無視できない要素であり、WCAG はアクセシビリティガイドラインの中で最も確立された基準です。したがって、ウェブサイトのコンプライアンス遵守のために必要なステップを確実に踏む必要があります。
ウェブアクセシビリティのテストと改善には、いくつかの方法があります。まず、WCAG のリファレンスガイドをご覧ください。このガイドでは、それぞれの推奨事項を分解し、その意図や成功事例、失敗事例について説明しています。このガイドは、WCAG への準拠を達成するためのいい出発点でしょう。
サイトの WCAG 準拠を確認するもう一つの方法は、サイトを監査し、アクセシビリティの問題を特定できる自動テストツールを採用することです。Acquia Optimize には、対処した問題に基づいてアクセシビリティレベルを把握するダッシュボードが用意されています。ただし、他の自動化ツールと同様、手動によるテストが前提となります。
Acquia Optimize は問題の発見や、基本的な問題の自動修正も可能ですが、私たちは常に手作業によるレビューと修正を推奨しています。自動化されたツールは問題を見つけるのに役立ちますが、ウェブアクセシビリティはユーザーがすべてなので、アクセシビリティを確保するには実際のユーザーテストと検証が必要なのです。
WCAG 規格に準拠するために、Acquia Optimize ができること
Acquia Optimize のウェブアクセシビリティモジュールは、WCAG 2.0と2.1(およびその後のガイドラインの更新)に照らし合わせ、サイト全体のアクセシビリティを診断します。
毎回機械でテスト可能な項目についてサイトをスキャンし、発生した可能性のあるエラーを確認、ガイドラインに基づいてこれらのエラーに対処する方法について的確な推奨事項を提示し、レベル A、AA、AAA に基づいて準拠状況を表示する詳細なレポートを提供します。履歴センターのレポートを通じて、アクセシビリティ準拠の進捗を追跡し、証明することができます。また、私たちはお客様向けにアクセシビリティに関するトレーニングを提供しており、包括的なサポートを行っています。これにより、自動および手動の修正方法の両方に精通し、効率的かつ一貫してウェブサイトのアクセシビリティを向上させることが可能になります。
また Acquia Optimize では、ウェブアクセシビリティへの取り組みを補完するための無料ツールも提供しています。たとえば、ウェブデザインに適合する色の組み合わせをテストするためのカラーコントラスト・チェッカーや、ウェブアクセシビリティへの取り組みを宣言するステートメントを作成し、明示するためのアクセシビリティ・ステートメント・ジェネレーターなどがあります。
よくある質問
WCAG 2.1は法的要件ですか?
WCAG 2.1には現在のところ強制力はありませんが、WCAG 2.1の勧告に従うよう他の規制が要求する可能性はあります。
WCAG 2.0は今でも有効ですか?
現時点では WCAG の各版は後方互換性があり、WCAG 2.0を含む以前のバージョンも適用可能であるとされています。
WCAG 改訂はコンプライアンスにどう影響しますか?
WCAG 2.2 は2023年10月に発行されました。すでに WCAG 2.1に準拠している企業は、最新バージョンに準拠するための十分な準備は整っていると言えるでしょう。
WCAGへの準拠はどのようにチェックするのですか?
WCAG 準拠をテストする最善の手段は、ソフトウェアと専門家による診断です。ソフトウェアは、最も一般的なウェブサイトのアクセシビリティエラーを発見することができますが、アクセシビリティ診断の専門家によるレビューを常にお勧めします。
アクセシビリティガイドラインを先取りし、準拠するウェブサイトを Acquia Optimize がどのように支援しているか、詳しくはこちらをご覧ください。
免責事項
本記事に掲載されている情報は、Acquia Inc. および/またはその子会社および関連会社によって提供されたものであり、現在の法的動向に関する一般的な理解を顧客に提供するための情報提供のみを目的としています。本記事は、特定の法的助言を提供するものと解釈されるべきではなく、お客様またはいかなる第三者と、Acquia Inc. および/またはその子会社および関連会社との間にも、弁護士/依頼人の関係は存在しないことをご了承ください。本記事は、お客様の法域において資格を有する弁護士による適切な法的アドバイスの代わりとして使用されるべきものではありません。